宝鏡山洞光寺の違い鷹羽紋・太平山龍蔵寺の菊紋
洞光寺は曹洞宗の寺院であることから、曹洞宗に多用される「竜胆紋」が寺紋であろうと思われた。ところが、本堂前の香炉には「違い鷹羽紋」が据えられていた。おそらく、開基の天鷹祖祐禅師の「鷹」にちなんだものと思われるが、どうだろう。


宮田山福徳貴寺の三つ星(三諦章)・三尾山弘誓寺の三つ引両
天帝の居所である紫微星を支える三台星の真下にある山が天台山で、天帝は仏陀あるいは真理・悟りそのものであり、三台こそが仏法を守護して衆生が真理を知り、悟りを開くための教え、すなわち天台宗だという。天台宗の宗章「三つ星(三諦章)」は、三台星を意匠としたもので、天台宗の寺院がこぞって用いている。紫微星は北極星、三台星は大熊座の一部と推測されている。とことで、妙見信仰が象徴とする北斗七星も大熊座であり、天台の三つ星と同根ものである。北天に輝く北極星を中心に諸星座が変わらぬ運行を繰り返すさまは、自然の真理を具象するものとして人々の信仰心をかきたてたであろう。


龍駒山松隣寺の沢瀉・本郷春日神社の下り藤
松隣寺は中世、草山一帯を支配した細見氏の菩提寺である。細見氏の家紋は「三つ星」が定番で、境内の一角にある細見氏の墓石もすべて「三つ星」が刻まれている。ところが、松隣寺の棟瓦を見ると「立ち沢瀉紋」を中央に「桐紋」「竜胆車紋」が左右に据えられている。竜胆車は曹洞宗の寺院に多用される紋であり、曹洞宗の松隣寺にふさわしいものである。立ち沢瀉紋が松隣寺の歴史、あるいは細見氏と深い関わりを持つと思われるが、その由来はどこに求められるのだろうか。


宗玄寺の二つ巴・明月神社の五七桐
宗玄寺は赤穂浪士の一人、不破数右衛門ゆかりの寺で、境内の一角に石碑が立っている。石碑を見ると「二つ巴紋」が刻まれているが、これは大石内蔵助の紋である。不破家の紋は、一説に「隅切り角に横一文字」と伝えられているが、石碑に据える紋としては著名な内蔵助のものを採用したのであろう。宗玄寺は中世、古市界隈を領していた酒井氏にちなむ寺で、寺紋は酒井氏ゆかりの「三つ巴紋」である。「二つ巴」、「三つ巴」と、巴に縁の深い寺といえそうだ。