篠山の歴史・見処を訪ねる-大沢新


田松川の谷中分水界



上流から分水界を見る、何の変哲もない小さな川だ


橋の左手が加古川へ、右側は武庫川へ

篠山市は兵庫県の中央部に位置していることから、西紀の栗柄峠、鼓峠、そして篠山口駅前の田松川と三ヶ所の谷中分水界がある。一般的に分水界は、山の峰がその役割を果たすことが多いが、平地にある分水界を「谷忠分水界」とよぶ。篠山口駅前東方を流れる田松川は、平地(海抜195m)を流れる普通の河川である。そもそもは、山から流れ落ちる水は別々の川となっていたようで、北へ流れる水は加古川へ、南へ流れる水は武庫川へと注いでいた。それが、明治八年()に丹波と摂津の物資を運搬するために開削された運河によって、両水系が結ばれることになった。こうして、一本の川のなかに分水界が存在するという、全国的に珍しい河川が生まれたのである。
運河は開削事業に尽力された当時の豊岡県参事「田中光儀」と、豊岡県篠山支庁詰めの「松島潜」両氏の頭文字をとって「田松川」と命名された。いまも、田松川の分水界より水は、北の加古川と南の武庫川に分流している。その様子は、まことに不思議なものである。
●駅前の説明板より