家紋の原形は、動植物、文様、用具、建造、自然現象など、約350種にのぼる。
 しかし、これらは長い間に増えに増えてゆく。たとえば、「木瓜紋」。たてに置かれたり、よこに置かれたり、剣をつけたり、外部に輪(丸)をつけたりする。また、輪も太輪、二重輪、藤輪、雪輪などがある。これだけで何種類もの木瓜紋となる。また木瓜紋を使用する家が繁栄するにしたがって、少しずつ原形を変化させて増えていくから、まさに家紋はどんどん細胞分裂して増殖していくことになる。

横木瓜 剣横木瓜 石持地抜竪木瓜 丸に横木瓜

 もっとも家紋が増え出したのは幕末から明治にかけてのようで、江戸時代前期までは苗字・家紋ともそんなに多くはなかったようだ。江戸時代の紋帳には約1000種の紋が収録されていて、これらの紋が比較的古くからあったものといえる。
 ただ、家紋の広がりはそれだけのバリエーションを創造したということであり、またそのひとつひとつがデザイン的にも洗練されている。これは世界に類を見ない。そして、そこにはシンプルでありながら「心」が感じられる。これは「家紋」がたんなる美術品ではなく「家」と結びついているからだろう。家紋には集約された伝統美と、祖先の魂が宿っている、と言えるのではないだろうか。


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