磯宮八幡神社の南側鳥居右側の草地に三本の榧の木がある。その中の一本が国指定の天然記念物裸榧(ハダカガヤ)で、世界中でこの1本だけという貴重なものだ。建武の新政府に謀反を起こして敗れた足利尊氏は丹波路を通って九州へ落ちる途中に、磯宮八幡に立ち寄った。そのとき、社僧の勝心が菓子として出したカヤの実を尊氏は皮をむいて社前に奉げ、武運長久とともにこの実が育って、無皮の実が成るようにと祈ったという。その実が育ったのが裸榧で、その実には堅い殻がなく渋皮だけである。九州で再起した尊氏は、京を制圧して幕府を開いたが、磯宮八幡に蒔いたカヤの実の霊験もあったのではなかろうか。
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