シュツゥットガルト空港からフランクフルト空港へ、そしてボローニャ空港へ。ボローニャ空港に着いたのは夜の8時。イタリアは小雨。ボローニャ駅前のホテルは、雨に濡れた石畳に映る光のせいか幻想的なたたづまいのなかに建っていた。
伝統的デザインの継承 大胆な在庫管理 早朝にホテルを出発、田園風景が続く快適な道路を小雨のなか、バスで走ること約2時間。Sassuolo市郊外にあるMARAZZI社へ到着。MARAZZI社は50年前に創業したイタリア最大、世界有数の建材用タイルメーカーだ。 製造拠点はイタリアに9工場、フランスに6工場、スペインとアメリカにそれぞれ1工場がある。営業は全世界を網羅しているとのこと。タイルは重いわりに廉価で、輸出コストが負担になる。それで市場の近くで生産を行っているということだ。現在アジアに工場建設を計画中だとか。「日本ではタイルが売れない、何故?」との質問。たしかに、日本の一般家屋ではタイルを水廻り以外に使うことは少ない。まして、タイルを使った床のリビングというのは非常に少ない…と説明をする。住まいに対する文化の相違がいくら良いデザインの製品であっても販売に大きな影響を与える、格好の話題ではあった。 ![]() ![]() MARAZZI工場 応対していただいたMARAZZIとOMRONのみなさん 600人が働く工場の制御には、オムロンのPLCが活躍していた。異国で日本製品が活躍しているのは妙に嬉しいものだ。製造プラントは外部エンジニアリング会社が手がけたとのこと。今回見学した工場は、業界で一番にISO9001を取得した工場だ。 まず、源泉工程から見学。ドイツ・ウクライナ・トルコなどから輸入された原料が、石と水がはいったホッパ内で粉砕、撹拌されている。ホッパ内の石は粉砕用のものだそうで、材料ではないとのこと。次いで撹拌された原料は脱水工程へと運ばれる。これらの工程を一人のオペレータが管理しているとのこと。かなり自動化は進んでいるようだ。 成形は20,000F/日のプレスで焼成時の収縮を計算して型抜きをしていく。次いで釉薬を施し色を付ける。色に関しては人手で調合、そのレシピは徒弟的に伝えているとのこと。そして色が施された焼成前のタイルに模様をシルク印刷でプリントする。それらの作業を終えると焼成工程へ。他に無釉薬の工程もあるとのことだった。 焼成窯はコンピュータとセンサで制御された長さ100mにもわたる大窯だ。また、炉内の温度を一定にするのに6時間を要するという。この窯で投入から焼き上げまで、35分かけて製品の完成となる。焼成窯を稼働させるためには30,000Fの製品が必要だという。つまり、30,000FごとのLot生産というわけだ。窯を有効に使うには30,000Fの製品を投入することが前提だといい、彼等はそれが必要だと語る。他に効率的な方法があるように感じるが、それがかの国のおおらかさなのだろうか。最後は検査工程、色・大きさ・厚みを全品目視で検査をする。さらに色の微妙なトーン検査を250枚に1枚の割合で抜き取りでやっている。製品検査はかなり入念に行っているようだ。「タイルにとって、強度もだがデザインと色は最重要のセールスポイントとなるからだ」という。そして、自動ロボットで箱詰めして、在庫エリアへ。これがMARAZZI社のタイル製造の全工程だ。 おおらかな在庫管理 MARAZZI社にきてから気になったのが、工場の廻りに山積みされた製品。「あれは在庫だ」とのこと。つまり在庫品は、四つのブロックに分けて野積みされているのだ。その山のなかをフォークリフトが走り、注文、出荷に応じているという。なかなか大胆な在庫管理といえそうだ。これでは、どの山のどこに目的の製品があるのかがわからなくなってしまうのでは?という素朴な疑問に対して、「どこの山にどの製品があるかは、色等の履歴も含めて管理側のコンピュータで把握している」とのことだった。在庫は6ケ月、先入れ先出しが原則だ。がユーモラスな風景ではあった。 MARAZZI社へのオーダーはカタログで製品が選ばれ、工場に発注がくる。そして見込み生産された在庫のなかから出荷されるという仕組みになっている。見込み生産とはいえ、マーケティング情報を2〜3週に1回とりまとめて、売れ筋を決める。そして、売れると見込んだ製品を製造しているそうだ。そして、「ストックがあるから、ユーザのオーダにすぐ応えることができる」といい、「コンピュータで自動化された倉庫よりも、現在の方法を優先している」という。とはいえ、最近では設計事務所と連携し、建造物の設計段階から建築家と共同しながら、製品開発に取り組みだしたという。が、そのおおらかな生産体制と大胆な在庫管理は、古き良き時代を彷彿させてくれた、といえば言い過ぎだろうか。 雨上がりの ボローニャ市内を歩く。 石畳が美しい、ボローニャの街。中世の雰囲気が色濃く残る、日本の小京都のような街だ。ここでは自由行動で、ショッピングや観光に息抜きを楽しむ。夜は、水戸市とも姉妹関係にあるというレストランでディナーをとる。席について、壁を見渡すとレストランを利用したという著名人のポートレイトがずらりと飾られている。ジュリアーノ・ジェンマ、ソフィア・ローレンの顔もあったりして。料理もなかなかの美味、ちょっと油濃いのは仕方のないところだろう。もちろん、イタリアワインも堪能しました。 |